国際税務

米国株の配当、なぜか税金が二重に引かれている?外国税額控除で取り戻す方法

2026年8月10日読了時間: 約10

「米国株の配当が入金されたけれど、明細を見たら現地で税金が引かれ、さらに日本でも税金が引かれている。これって二重に取られていないだろうか?」——最近、資産運用として海外の株式やETFを持つ方が増え、当事務所にもこうしたご相談が多く寄せられます。

たしかに、外国株の配当は「現地の国」と「日本」の両方で課税されるのが原則です。放っておくと同じ所得に二度税金がかかったままになってしまいます。これを調整してくれるのが「外国税額控除」という制度です。少し手間はかかりますが、正しく申告すれば納めすぎた税金を取り戻せる可能性があります。この記事では、その仕組みと確定申告の進め方を、できるだけかみくだいて整理します。

そもそも外国税額控除とはどんな制度か

日本の居住者(日本に住所がある個人など)は、日本国内で得た所得だけでなく、世界中で得た所得(全世界所得)に対して日本の所得税がかかります。一方で、配当を出した国(たとえば米国)でも、その国のルールで税金が源泉徴収されます。結果として、外国で得た所得には現地と日本の税金が重なってしまいます。

この重複を和らげるために、外国で納めた一定の税額(外国所得税額)を、日本の所得税額から差し引けるようにしているのが外国税額控除です。国税庁の「No.1240 居住者に係る外国税額控除」では、控除の対象となるのは外国の法令によって課される「所得税に相当する租税」とされています。ただし、あとから還付を請求できる税や、納税者と当局の合意で自由に決められる税など、性質上「所得税に相当する」とはいえないものは対象外です。

なお、控除には所得税だけでなく復興特別所得税、さらに住民税も段階的に関わってきます。まず所得税から差し引き、引ききれない分を復興特別所得税・住民税の順で調整していくイメージです。

外国税額控除で注意すべきポイント

  • 対象になるのは「所得税に相当する外国の税金」で、現地の還付可能な税などは含まれません。
  • 控除を受けられるのは日本の「居住者」が原則で、非居住者は別のルール(No.1241)が適用されます。
  • 控除は「税額から直接差し引く」方式のため、同じ金額でも所得控除より減税効果が大きくなりやすいです。

いくらまで控除できるのか——控除限度額の考え方

外国で納めた税金を「全額そのまま」差し引けるわけではない点が、この制度の分かりにくいところです。日本の所得税から差し引けるのは、あくまで「日本の税額のうち、国外所得に対応する部分」までという上限(控除限度額)が設けられています。

国税庁が示す計算式は次のとおりです。

区分 控除限度額の計算式
所得税 その年分の所得税額 ×(調整国外所得金額 ÷ 所得総額)
復興特別所得税 その年分の復興特別所得税額 ×(調整国外所得金額 ÷ 所得総額)
住民税 所得税の控除限度額 × 30%

つまり、所得全体に占める国外所得の割合に応じて、控除できる枠が決まる仕組みです。外国で納めた税額がこの枠に収まれば全額を差し引けますが、枠を超えた分はその年には引ききれません。

このとき役立つのが「繰越」の制度です。外国所得税額が控除限度額を上回った場合(控除限度超過額)や、逆に枠が余った場合(控除余裕額)は、前年以前3年内の各年分を使って調整できます。ある年に引ききれなかった外国税を、枠に余裕のある年へ回して活用できる、というイメージです。ただし計算はやや複雑で、超過した場合と余った場合で扱いが分かれるため、明細書での丁寧な計算が欠かせません。

控除限度額で注意すべきポイント

  • 外国で納めた税額をそのまま全額引けるとは限らず、国外所得の割合に応じた上限があります。
  • 引ききれない分・枠が余った分は、前年以前3年内の各年で繰り越し調整できます。
  • 繰越を使う場合は、その年に控除限度超過額や控除余裕額が生じたことを申告書で継続的に記録しておく必要があります。

米国株の配当を例に考えてみる

イメージしやすいよう、多くの方が保有している米国株の配当を例にします。米国株の配当は、日米租税条約に基づき、原則として現地で10%が源泉徴収されます(銘柄の業態などにより異なる場合があります)。その後、日本国内でも配当所得として課税されるため、二重課税の状態になります。この現地の10%部分を、外国税額控除で日本の税額から調整するわけです。

ここで大切なのが「日本での申告方法」です。米国株など上場株式等の配当は、日本では総合課税と申告分離課税のいずれかを選んで確定申告できますが、外国税額控除を受けられるのは、この配当を総合課税または申告分離課税で確定申告した場合に限られます。証券口座で源泉徴収されたまま申告不要を選ぶと、外国税額控除は使えません。

もうひとつ見落としやすいのがNISA口座です。NISA口座で保有する株式の配当は、そもそも日本国内で非課税であり、二重課税が生じません。そのため、現地で源泉徴収されていても外国税額控除の対象にはなりません。「NISAなら現地の税金も取り戻せる」と誤解されがちなので注意が必要です。

米国株配当で注意すべきポイント

  • 外国税額控除を使うには、その配当を総合課税か申告分離課税で確定申告することが前提です。
  • NISA口座の配当は国内非課税のため、外国税額控除の対象になりません。
  • 総合課税を選ぶと配当控除との関係、申告分離課税を選ぶと他の株式の損益通算との関係も変わるため、どちらが有利かは所得全体で判断します。

総合課税と申告分離課税、どちらで申告するか

外国税額控除を使う前提として避けて通れないのが、上場株式等の配当を「総合課税」と「申告分離課税」のどちらで申告するかという選択です。どちらを選んでも外国税額控除自体は適用できますが、税額の出方や他の制度との組み合わせが変わります。おおまかな違いを整理すると次のようになります。

比較の観点 総合課税 申告分離課税
税率 給与など他の所得と合算し、累進税率(所得が多いほど高い) 上場株式等の配当等として一定税率で計算
配当控除 適用できる場合がある(外国法人からの配当は原則対象外) 適用できない
上場株式等の譲渡損との損益通算 できない できる
向いている人の傾向 課税所得が比較的低く、累進税率が低めに収まる方 株式の売却損があり損益通算したい方、所得が高めの方

ここで注意したいのは、外国株の配当は「外国法人からの配当」にあたるため、総合課税を選んでも日本の配当控除は原則として使えない点です。したがって外国株中心の方は、他の株式の損益通算ができる申告分離課税が候補になりやすい一方、所得全体の水準によっては総合課税のほうが有利になることもあります。どちらが得かは、その年の所得構成によって変わるため、両方で試算して比べるのが確実です。

課税方式の選択で注意すべきポイント

  • 外国株の配当は原則として配当控除の対象外なので、「総合課税=配当控除で有利」とは限りません。
  • 申告方法の選択は所得税と住民税で異なる方式を選べる場合もあり、住民税側の影響も含めて検討します。
  • いったん選んだ課税方式は後から自由に変更しにくいため、申告前の試算が大切です。

数字で見る外国税額控除のイメージ

言葉だけでは分かりにくいので、ごく簡単な数値例で流れを見てみます。あくまでイメージをつかむための単純化した例で、実際の税額は各種控除や他の所得によって変わります。

たとえば、米国株の配当が日本円換算で年10万円あり、現地で10%にあたる1万円が源泉徴収されたとします。この配当を日本で申告し、日本の所得税・復興特別所得税・住民税の計算に含めます。ここで、その年の所得税額や国外所得の割合から計算した「所得税の控除限度額」が仮に8,000円だったとすると、外国で納めた1万円のうち、まず8,000円までを所得税から差し引きます。

引ききれなかった残りの2,000円は、そのまま消えてしまうわけではありません。復興特別所得税の控除限度額、さらに住民税の控除限度額(所得税の控除限度額の30%)の順で調整していきます。それでも引ききれない場合は、前述の繰越制度により前年以前3年内の各年の枠を使って調整する余地があります。このように、外国税額控除は「所得税→復興特別所得税→住民税」という順序と「3年間の繰越」という時間軸の両面で、二重課税をできるだけ取りこぼさない設計になっています。

逆に、控除限度額に余裕がある年は、その余裕(控除余裕額)を将来の超過額に充てるために記録しておくと、後の年で外国税を多く納めたときに役立ちます。毎年の明細書をきちんと残しておくことが、結果的に手取りを守ることにつながります。

数値例で注意すべきポイント

  • 実際の控除額は所得税額と国外所得の割合で決まるため、「納めた外国税=そのまま戻る額」ではありません。
  • 為替換算のレートや配当の受取時期によって円換算額が変わるため、証券会社の資料で正確な金額を確認します。
  • 少額でも毎年きちんと明細書を残すことで、繰越の枠を無駄なく使えます。

今日から始める5ステップ

実際に外国税額控除を使うときの流れを、順を追って整理します。

  1. 証券会社の年間取引報告書や配当金の支払通知書を集め、外国でいくら源泉徴収されたか(外国所得税額)を確認します。
  2. 対象の配当を、日本で総合課税または申告分離課税のどちらで申告するかを検討します(申告不要のままだと控除は使えません)。
  3. 「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」に、外国所得税額や国外所得金額などを記入し、控除限度額を計算します。
  4. 外国で税金が課されたことを証する書類(支払通知書や納付を確認できる書類など)を準備し、確定申告書に添付・保管します。
  5. 引ききれない金額がある場合は、繰越控除の欄に控除限度超過額・控除余裕額を記録し、翌年以降に備えます。

なお、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、外国税額の繰越控除に対応した入力が用意されています。手計算が不安な場合は、こうしたツールを併用すると計算ミスを防ぎやすくなります。

おわりに

外国税額控除は、二重課税を調整して納めすぎた税金を取り戻せる、投資をされている方にとって心強い制度です。一方で、控除限度額の計算や繰越の扱い、総合課税と申告分離課税のどちらを選ぶかによる有利・不利の判断など、実務では悩みどころが少なくありません。とくに保有銘柄が多い方や、給与以外の所得もある方は、全体を見て判断したいところです。当事務所では、確定申告の作成から課税方式の選び方まで、お一人おひとりの状況に合わせてご相談を承っています。「自分の場合はいくら戻るのだろう」と気になる方は、どうぞお気軽にお声がけください。

<参考サイト>

※本記事は執筆時点(2026年8月)の情報に基づいています。制度の詳細および各種手数料は、最新の法令および国税庁の公表内容をご確認ください。

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外国税額控除国際税務米国株配当所得二重課税確定申告所得税

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